旅の記録 群馬編
上毛三山と、
ふたつの湯の町。
写真はすべて朝霧が撮影したものです
去年の夏、群馬へ行ったときの記録です。
群馬には「上毛三山(じょうもうさんざん)」と呼ばれる三つの山があります。
榛名山(はるなさん)、赤城山(あかぎさん)、妙義山(みょうぎさん)です。
今回は、その三つの山と、山あいの温泉の町を歩いてきました。
群馬県渋川市・伊香保温泉|去年の夏
伊香保(いかほ)温泉は、榛名山の東の中腹にある、古い温泉の町です。
町のまんなかには、三百六十五段の石段が、まっすぐ上へ続いています。
石段の両側に、宿やお店がならんでいます。
この石段ができたのは、一五七六年。
戦国時代に、武田家の命を受けた真田昌幸(さなだまさゆき)が、けがをした兵を休ませるための湯の町として整えさせたと伝わっています。
石段の両側に宿を置いて、湯を分けるしくみは、日本で初めての「温泉の町の計画」といわれています。
真田家といえば、この秋に歩いた、信州・上田の城の家です。
旅をしていると、ときどき、こうして話がつながります。


夜の石段は、昼とはまるで違って見えました。
一段ずつ、足もとの明かりを数えるように上っていきました。
傷ついた人を休ませるために、
つくられた町が、
四百五十年たった今も、人を休ませています。
赤城山の上の湖
群馬県前橋市・赤城山|去年の夏
赤城山は、群馬のまんなかに、大きく裾野を広げている山です。
山の上には「大沼(おの)」という湖があります。
標高はおよそ千三百四十メートル。昔の噴火でできたくぼみに、水がたまってできた湖です。


湖のまわりには、やわらかい草原が広がっていました。
夏なのに、山の上の風は、少しひんやりしていました。
妙義山と、中之嶽神社
群馬県下仁田町・妙義山|去年の夏
上毛三山の三つ目、妙義山は、ほかの二つとはまるで違う形をしています。
岩が、のこぎりの歯のように、空に向かってとがっています。
日本三大奇景(きけい)のひとつに数えられる山です。
その岩山のふもとにあるのが、中之嶽神社です。
大きな岩そのものを、神さまとしてまつってきた神社です。
境内には、高さ二十メートルの、金色の大国様(だいこくさま)が立っています。
日本一大きい大国様だそうです。


しめ縄の下からは、杉のあいだを、急な石段がまっすぐ上へ続いていました。
見上げるだけで、息が切れそうな石段です。
とがった岩のふもとにも、
人を守る場所は、
ちゃんとあります。
四万温泉の、積善館
群馬県中之条町・四万温泉|去年の夏の夕暮れ
最後は、山の奥の四万温泉へ。
赤い橋の先に立つ積善館の本館は、一六九一年に建てられたものです。
今も残っている木造の湯宿の建物としては、日本でいちばん古いといわれ、国の重要文化財になっています。
映画『千と千尋の神隠し』の湯屋を思わせる、といわれることもある宿です。
三百年以上、この宿は、山の奥で、旅の人を迎え続けてきました。
夕暮れの赤い橋の上で、しばらく動けませんでした。
もし今、あなたが、ずっと走り続けて、少し疲れているなら。
伊香保の石段は、もともと、傷ついた人を休ませるためにつくられた町でした。
休むことは、止まることではありません。
次に歩くために、少しだけ湯につかってください。
言葉にならない気持ちを、
そのまま送ってください。
伊豆の縁めぐり 其の二修善寺の、赤い橋と湯。
旅の記録 富士宮編富士山のふもとの、社と滝。
旅の記録 西伊豆編戸田(へだ)の海と、赤い鳥居。
旅の記録 伊豆編朝霧が、歩いた場所。
伊豆の縁めぐり 其の一頼朝と政子が、出会った山の社。
※写真はすべて朝霧が撮影したものです。
※伊香保の石段街・赤城山・妙義山・中之嶽神社・積善館の内容は、群馬県や各地の観光案内などで紹介されているものをもとにしています。朝霧は、各社寺・宿の関係者ではありません。