伊豆の縁めぐり 其の二
修善寺の、
赤い橋と湯。
写真はすべて朝霧が撮影したものです
去年の1月、冬の晴れた日に、修善寺を歩きました。
伊豆の山あいにある、古い温泉の町です。
町のまんなかを、桂川(かつらがわ)という川が流れています。
川にかかる赤い橋と、冬の青い空が、よく似合う町でした。
伊豆市修善寺|去年の1月
修善寺という町の名前は、ひとつのお寺から来ています。
修禅寺です。
今から千二百年ほど前、八〇七年に、弘法大師(空海)がひらいたと伝えられています。
寺の前には、桂川が流れています。
川をはさんで、旅館やお店が並び、
そのまんなかに、お寺がどっしりと座っています。
千二百年のあいだ、この町は、このお寺のまわりで暮らしてきたんだと思います。
父を思う少年の湯
修善寺温泉|去年の1月
修善寺温泉には、湯のはじまりの話が残っています。
ある日、弘法大師が川辺を歩いていると、
ひとりの少年が、病気の父親の体を、冷たい川の水で洗っていました。
「川の水では、冷たかろう」
そう言って、大師が手に持っていた仏具で川の岩を打つと、
そこから、温かい湯が湧き出した。
それが、修善寺温泉のはじまりの「独鈷の湯(とっこのゆ)」だと伝えられています。
この話の主役は、たぶん大師ではなく、少年のほうだと思います。
冷たい水でも、父親の体を洗い続けた。
その気持ちに、湯が応えたんです。
誰かを思ってしてきたことは、
ちゃんと、温かいものになって
返ってきます。
桂川の赤い橋
修善寺温泉|去年の1月
桂川には、赤い橋がいくつもかかっています。
橋の上に立つと、足もとを、川の音がずっと流れていきます。
冬の川は、水がすき通っていて、底の岩まで見えました。
温泉の町を歩くと、体より先に、気持ちがゆるんでいく気がします。
急いで歩いている人が、ひとりもいないからかもしれません。
もし今、あなたが、誰かのためにがんばり続けて、少し疲れているなら。
その気持ちは、ちゃんと届いています。
冷たい水の中でも、手を止めなかった少年のように。
今日は、あなたが温まる番です。
ゆっくり休んでくださいね。
言葉にならない気持ちを、
そのまま送ってください。
旅の記録 富士宮編富士山のふもとの、社と滝。
旅の記録 鎌倉編頼朝と政子が、伊豆のあとに作った町。
旅の記録 西伊豆編戸田(へだ)の海と、赤い鳥居。
旅の記録 伊豆編朝霧が、歩いた場所。
伊豆の縁めぐり 其の一頼朝と政子が、出会った山の社。
※写真はすべて朝霧が撮影したものです。
※修禅寺・独鈷の湯の由来は、伊豆市の観光案内などで紹介されている言い伝えをもとにしています。朝霧は、修禅寺の関係者ではありません。